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までの既成学都にはなかった科目が目白押しであることに驚かされる。「政策科学概論」「総合政策学」「政策過程論」「政策管理論」「政策評価論」「政策分析論」「立法技術論」など列挙すればきりがない。もちろん、在来学部の伝統的な科目と重複するものも少なくないが、上記の政策系科目がまず目立っている。これらの科目は、1990年の慶應総合政策学部の設置以前は、ごく一部の政策科学系大学院のみに設置されていただけであった。それが僅か数年の間にいくつもの大学に広がっているところに、政策系学部の与えた衝撃を感じないわけには行かない。
しかし、これだけに目を奪われると、SFCに続く各大学が単に慶應の成功に刺激を受けて同じような科目を設置しているだけとの皮相的な印象を受けてしまうかも知れない。語学や情報処理に強い学生を養成するという先に指摘した一般的イメージもそうした慶應フォロワー的な固定観念に拍車をかけている。しかし、これから検討する5学部の基礎理念や講義のシラバスをみると、各大学の個性が分かってくる。問題は、政策系大学を志望する学生や卒業生の受け入れ先の企業・官庁などがマスコミにより増幅されたSFCのイメージを各大学に求める傾向があるということである。そうした誤解を解くためにも、私たちはまず各大学の共通性と個性を見極めなければならない。基礎理念やカリキュラムは第3章で詳しく紹介されているので、以下では必要な範囲で私見もまじえて言及するだけにとどめたい。
(1)慶応義塾大学総合政策学部
良い意味でも悪い意味でも、慶應義塾大学総合政策学部の成功がその後の政策系学部の方向を規定したといっても言い過ぎではない。ただ注意を要するのは、SFC(湘南藤沢キャンパス)には総合政策学部以外に「環境情報学部」も設けられていることである。環境情報学部については、カリキュラム内容が総合政策学部以上に多岐にわたり、いささか学部の性格がつかみにくい。敢えて単純化していえば、総合政策学部が社会科学の総合化を志向しているのに対し。環境情報学部が情報化時代に対応した人文科学の総合化を志向しているといえようか。ただ環境情報の名を冠する割には、カリキュラム内容が情報・言語・メディア関係に偏り、環境学関係が手薄な感は否めない。例えば、環境法や開発法制、環境アセスメントなどの科目が設けられていないのは、環境情報学部の看板からするかぎり、いささか問題である。恐らく、SFCでは「環境」を狭い意味での自然環境だけでなく、人間環境やメディア環境まで含めた広義の意味で用いているのであろう。それにして

 

 

 

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